紡ぐべき糸
後になってわかる。
でも その時は そう思わなかった。
それが すべてだと 聡は思った。
縁とか、運命とか。
選べなかったことが 全ての証しだと思った。
あの夜以来 啓子を見る目が 変わった聡。
啓子を 幸せにすることが 自分も 幸せになることだと 聡は 思い始めていた。
啓子は 自分と同じだから。
でも 美咲の存在は 大きくて。
まだ 美咲のことを 思わない日はない。
美咲の笑顔、声、眼差し。
すべてが 聡の心に 残っていた。
会えないからこそ強く。
どんどん 美化されていく。