紡ぐべき糸
朝 お茶を 淹れてくれた啓子に
「ありがとう。」
と言う聡。
いつも通りの やり取りなのに。
一瞬 目が合った啓子は 久しぶりに 頬を染めた。
「うん?何?」
聡は 何気なく 啓子に聞く。
「いえ。今の “ ありがとう ” に、すごく 重みがあったから。」
立ち止まって 答える啓子。
「林さん。からかわないでよ。」
聡は苦笑して答える。
聡の心は 動き始めていた。
もしかして。
もう少し 時間をかければ 美咲のことを 乗り越えられる。
そうしたら、啓子を愛せる。
八年の月日が、聡と啓子を 変えたから。