嘘つきは恋人のはじまり。



マンションのエントランスは中から人が出てきたタイミングでインターフォンを押すこともなくすんなりと潜ることができた。そして今、部屋のインターフォンを押すか押さまいか悩んでいる。


体調が悪い時無理して出てくる必要はない、と思う。自分だったら寝かせて欲しいし、寝ている時に起こされたくない。


どうしよう、と思いながらわたしの指はインターフォンの近くで止まったまま。


……やっぱりやめよう、


ドアノブに購入したものを引っ掛けて九条さんにメッセージを送ることにした。


気がついた時に中に入れてもらえればいいや。


わたしはドアノブに引っ掛けたことで満足し、意気揚々とエレベーターホールに向かって歩き始める。九条さんへメッセージをパパッと打って送信した。


よし!


わざわざ出てきてもらうのも悪いしね。身体が辛い時は起きるのだって面倒だし。


エレベーターを待ちながら、時間を確認する。まだ午後4時を少し過ぎた頃だ。買い物をして作り置きできるものを作って、それを夜ご飯に、なんて考えていた時だった。


 
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