嘘つきは恋人のはじまり。
出てこなくていいのに……!
顔を見れば体調の悪さは一目瞭然だった。思わず駆け寄ると九条さんがぎゅう、と抱きついてくる。
「…ちょっと、重い…って、裸足!」
九条さんの身体が熱い。わたしは彼を宥めながらとりあえず扉の内側に入り、彼を寝室に向かわせると、自分で買ってきた食料たちを部屋の中に運んだ。
「薬飲みました?」
九条さんが首を横にふる。聞けば今朝から何も食べていないという。
ベッドの横にあるサイドテーブルには空になったペットボトルが2本あるだけだった。わたしはそれをキッチンに持っていき、買ってきたスポーツドリンクを準備する。
失礼ながら保冷剤のようなものはあるかと冷蔵庫を開けさせてもらったけど、冷凍庫はほとんど空っぽ。冷凍庫どころか冷蔵庫の中もからっぽだった。
冷えピタとか氷枕とか必要なものがない。
「九条さん、体温計ありますか?」
九条さんは首を横に振った。持っていないらしい。
「……寝てれば治る」
「その前に薬あるんですか?ないなら病院にいきましょう。その方が早いです」