嘘つきは恋人のはじまり。


九条さんはお粥を平らげると薬を飲みソファーに寝転がった。それを寝室に行くように伝えるも「いや」とか「ここでいい」とか我儘言いたい放題だ。


「もう。早く治るように言ってるんです!冷えピタ貼って寝てください」


冷えピタを渡せば受け取ろうともしない。おまけに前髪を上げて突き出してくる始末だ。


わたしはあなたのお母さんじゃないっ


「ん」


んって。何。


「玲」


貼って、と彼は言う。


「ちゃんとベッドで寝るなら貼ってあげます」


「その敬語、やめるならベッドで寝る」


なんで!
なんなの、その、交換条件。


「敬語とか距離感じる。恋人同士だろ?要らない」


(仮)だけどね!


九条さんの言葉に仕方なく頷いた。たったそれだけなのに九条さんは嬉しそうに笑う。


「九条さんも駄目。ちゃんと名前で呼んで」


「それは追々ね。早く、ベッドで寝る」


「玲も」


はぁ?!


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