嘘つきは恋人のはじまり。




 言葉と同時に九条さんは立ち上がると、どこにそんな力があるのか、わたしを抱き上げてスタスタと寝室に向かった。突然のことになす術もなく、下された場所はもちろん九条さんのベッドの上で。


「ちょっと、なんで!」


「一緒に寝る」


なんという早技。
九条さんは言葉より早くわたしを抱きこんだ。それと同時に器用に布団捲り、きっちりと布団の中へ。


「…九条さ、」


身体を捉える腕が力強く包囲する。腰も背中も肩もがっちりと腕が回り、逃げたいのに逃げられない状況にどうすればいいのか分からなくて。


どくん、どくん。
心臓の音が煩くなる。息ができないほど近い距離にいる彼の顔をただ黙って見つめ返した。


「……楽しかった?G.W」


「…!」


「俺のメッセージ無視するぐらい楽しかったんだろうな」


皮肉を込めた言葉、鋭くなった視線。囚われた身体はびくともせずわたしはただ息を飲んだ。



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