嘘つきは恋人のはじまり。
……九条さん、怖い。
ひしひしと感じる無言の威圧感、静かに怒りを滲ませた視線に萎縮してしまう。だが、彼をここまで怒らせてしまった原因はわたし。
それを受け止めながらも開き直れば、わたしが誰と会おうが勝手だし、九条さんに怒られるのも違うと思う気持ちが複雑に絡みあう。
だけど、ちゃんと向き合うと決めた。向き合って、期限がきたらちゃんとごめんなさいしようと決めた。
だからわたしが悪い。
しゅん、と萎んでしまった気持ちを隠すように九条さんの視線から逃げた。向き合う、と決めたばかりだけど、これ以上九条さんと目を合わせていると泣きそうになった。泣き顔はもう見られたくなかった。
「……じゃあ、俺が治るまでここに居て」
「それで許してやる」と続いた言葉におずおずと視線を上げた。
「治ったら玲の飯、食わせて」
それはさっき約束したやつだ。だけど、そのことには触れず、もう一度首を縦に振る。
「唐揚げが食いたい。ビールと一緒に」
リクエストまで飛んできた。思わず口元を緩めると九条さんの表情も嬉しそうに緩んだ。