嘘つきは恋人のはじまり。
九条さんに冷えピタを貼って、準備しておいた氷まくらに頭を置くように伝えた。氷まくらに驚いていた彼に「点滴をしている間に取りに行った」といえば嬉しそうに目尻を下げた。
「ここにいますよ」
九条さんはがっちりと抱き込んでいたわたしを解放するも、仰向けになり、片腕でわたしを抱き寄せたままだった。
身体が辛い時は楽にしてほしい。
それを伝えても彼はよほど心配性なのか、わたしを信用してくれていないのか、チラチラとこちらを見ながら腕を伸ばしてくる。
「…せっかく近くにいるのにもっとくっつきたい」
「病人は安静にしてください」
「元気だし」
「じゃあ帰、」
「元気じゃない」
そんなやり取りをしているといつの間にかわたしも九条さんも肩の力が抜けていつも通り軽口も言い合えるようになっていた。
……今何時だろう。
いつの間にかわたしも寝てしまっていたらしい。気がついたときは部屋の中は真っ暗で、九条さんはせっかく持ってきた氷まくらを他所へやり身体をこちらに向けて丸くなっていた。
わたしの手を握りしめ、もう片方の手が腰を抱く。そんな彼の様子に若干呆れながらも、よく寝ている彼を起こすのも忍びなく思い、かと言ってもう一度目を閉じるほど眠気はない。