嘘つきは恋人のはじまり。
「おにぎりまだある?」
目敏い九条さんはわたしがおにぎりを隠し持った瞬間に声をかけて来た。仕方なく袋から取り出し、並べてゆく。
「好きなのどうぞ」
「ありがとう」
九条さんは遠慮なくおにぎりを取った。わたしはこういう時のことも考えてまだいくつか残っているカップ麺に手を伸ばすとお湯を入れに立ち上がる。
「今度は何?」
九条さんがついて来た。どこか嬉しそうにぴこぴこ尻尾を振っている。
「シーフード」
「俺も。半分」
「わたしの食べたでしょ?」
「半分もなかった」
「結構残ってたよ!それにおにぎりもあ、」
九条さんはお湯を注いだカップ麺を取り上げるとソファーに向かう。仕方なく後に続けば、九条さんは嬉しそうに振り向いた。
「時間計って。ちょっと固めがいい」
そこは同感だ。わたしは携帯のタイマーを再びセットしてソファーに座る。九条さんはおにぎりを2つ、わたしの食べかけのカップ麺と新しく作り直したカップ麺約2/3、餃子3つをペロリと平らげた。