嘘つきは恋人のはじまり。
「気持ち悪くないんですか?」
再び寝室に戻った私たちは向き合って寝転がる。九条さんの腕はわたしを抱き、わたしは大人しく横たわったまま。
「うん。やっと腹が満たされた」
嘘をついている様子はない。だけどあまりにも勢いよく食べていたから念のため洗面器の準備もしている。
「無理はしないでください」
「気分が悪くなったら玲に看病してもらうからいい」
もう。こっちは本気で心配しているのに。当の本人はどこふく風だ。むしろ若干嬉しそうで楽しそう。尺だ。
「いつ買いに行った?風呂も」
九条さんは今更な質問をしてきた。
さっきは食べることに必死でそれどころじゃなかったんだろう。ここに来た時とは違う、緩い恰好(部屋着)になっているし、すっぴんだ。
「さっき。1時間ほど前に一度家に戻りました。着替えもなかったので。あと、歯ブラシとか」
「言ってくれれば良かったのに」
「言えるわけないです」
九条さんは少しだけ剥れる。病人にそんなことさせるほどわたしは鬼ではない。
「それにお腹も空いていたのでちょうどよかったんです」
そう。ちょうど良かったのだ。
それにお腹を空かせた九条さんもカップ麺とは言え食べられる分だけ食べた。本人が気持ち悪くないと言っているから大丈夫だろう。