嘘つきは恋人のはじまり。


 テーブルの上に並べたそれらを分けながら全てきれいに平らげると九条さんは薬を飲んで寝室に戻った。


テーブルを拭いて一応綺麗に片付けたあとは歯を磨いたり顔を洗ったり身嗜みを整えた。一応私服にも着替える。着替えるとは言っても楽な緩い服だ。踝まであるロングワンピース。部屋着である。


昼ごはんは何もないからどうしようかな、と考えながら寝室を覗く。九条さんは起き上がってPCを開いており、わたしは九条さんに近づくとそれを取り上げて諫めた。


「もう!仕事は体調戻ってから!」


「だいぶ良いんだ」


「なら帰ります」


「それは駄目!やだ」


九条さんは怨みがましい目を向けるとすごすごとおとなしく身体を横にした。わたしは一応PCの状態を確認してリビングのテーブルに置く。これで寝室にいる間は触れない。


「……玲、来て」


寝室に戻れば子犬のような目で縋る九条さんに苦笑いしか出なかった。おもちゃを取り上げた子どもが母親に甘えるみたいだ。


わたしは仕方なく九条さんの隣に潜り込むと抱きしめてきそうな彼を躱しながら寝るように伝えた。九条さんは不服そうにしていたものの、手を握ってやれば大人しく目を瞑った。


 
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