嘘つきは恋人のはじまり。


そんなわたしの心配をよそに、九条さんはもりもり食べると薬を飲んでソファーに転がった。


後片付けを終えたわたしを見て膝枕をせがむ。


「ちゃんとベッドに」


「いい。膝枕」


「良くない!」


膝枕、膝枕、とすごくうるさくてつい「治ったら」と言ってしまったことを後々後悔することになるのだが。


「玲も寝よう」


なにその「お昼寝しよう」的なノリは。


薬を飲んだ九条さんに冷えピタを貼りベッドに寝かせたものの、彼の腕はわたしを離してくれない。それどころかここに留まることを希望している。

……今に始まったことじゃないけど


「わっ、ちょっと!良いって言ってない!」


それでも、あくまで希望、のはず。だが、有無を言わさず抱きこんでくるあたり、もはや強制どころか選択肢がそれしかないのはいかがかと。


「良い」


え、それを九条さんが言うの?


思わず目を丸くすれば九条さんが笑う。釣られてわたしも笑えば、寝室は和やかな空気が漂った。


「それ、わたしのセリフです!ってか、良くないんですけど」


「良い。俺が良いから」


「なんですか、それ。ジャイアン?」


「そ。玲は俺のだから俺が良ければ良い」


「なんかだいぶ違う」




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