嘘つきは恋人のはじまり。
彼氏と仮氏3
キスだけ
初めこそ静かにおとなしいキスが繰り返されたのに、今はもう耳を塞ぎたくなるぐらい官能の色が音にのせられていた。
口の端から漏れる淡い声。甘く熱い視線に体温が1度上がる。咥内を愛撫するそれはわたしをうかがうように優しく交わった。
「…だっ、……っ」
頭の片隅に残った理性を総動員させてなんとか拒絶の声を上げるも、それは最後まで音になることなく、九条さんに飲み込まれていく。
「っ、ん」
体制は不利。少し前の少年のような笑顔はない。色気をだだ漏れにさせて、熱を孕んだ目がわたしを見下ろして、まだ足りないと全身で要求する彼はわたしの膝を破り身体を屈めた。
「…や、」
覗き込まれて反射的に顔を背ける。
「玲」
だけどそれを咎めるように諫める声がわたしを呼んだ。
「…キスだけ」
まだ呼吸が整っていないのに九条さんはまた唇を塞いだ。今度はもう遠慮のカケラもなく咥内を貪っていく。酸欠で抵抗力もないわたしは何も出来なくてただ、九条さんのTシャツを握りしめることだけだった。