嘘つきは恋人のはじまり。
九条さんの物言いに少々拍子抜けした。
こんな凄い会社の代表に何を要求されるのかと身構えていたところもあったからだ。
それでも、いや、それならいっそのこと、業界に明るい経験のあるコンサルタントの方が良いのではないだろうか。
わたしは今浮かんだ疑問を思いつくままぶつけた。
『……それならわたし、じゃなくていいですよね?』
『どうして?』
いや、どうして?と言われても。
わたしは目の前で不思議そうな顔をしている彼がなぜそんな不思議そうにするのか分からなかった。
『宮内さんは、うちに合うと思ったから。あとはまあ、勘』
『…勘って』
『この人を巻き込めば面白くなるかなって』
九条さんは楽しそうに目を細めて笑った。初めてあった時に見せたツクリモノとは違う。彼の素を垣間見た気がした。
『それに、緒方さんから宮内さんの手腕は聞いているからね。ただ純粋に貴方と一緒に仕事をしてみたい、と思ったんだ。経験値のある人やその業界に強い人、というのは魅力的に映るけど、うちは“人”を大切にする社風でね。今いる人たちと協力ができて、且つ、上手く彼らをボトムアップしてくれる人がいい。それって別に業界に明るい、暗いって関係ないし、その人のセンスだったり、姿勢だったり、他にも色々とあるけどね』
“九条社長”のこだわりを聞いて素直に嬉しかった。緒方さんがどういう風にわたしを売り込んでくれたのかは知らないけど、ただ感謝の気持ちが膨らむ。