嘘つきは恋人のはじまり。



デザートは旬の苺づくしだった。
定番の苺のショートケーキ、ババロア、バニラアイスに苺ソースがかけ、フォンダンショコラに添えられた瑞々しい生苺。マカロン、シュークリーム、苺ムース。


食べるもの、というより最早鑑賞するもの、に近いそれは、ひとつひとつが小さなサイズで一枚のプレートに完結するよう、美しく並べられていた。


『苺の七種盛り。期間限定だから……運が良かったのかな』


『そうですね!』


甘いものは大好きだ。
苺も好きだし、どれも全部好きなものばかり。


あぁ、食べるのが勿体ない。でも食べたい。
どれから食べようか悩みながらひとつずつ口に運ぶ。


『……美味しい、』


どのケーキもクドくならない。
甘すぎないし、苺の酸味が程よく効いている。


わたしは最早デザートに感動しすぎて九条さんの存在を忘れていた。そのせいで九条さんがいったいどんな顔してわたしを見ていたか、なんて考えもしない。



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