嘘つきは恋人のはじまり。
あなた誰ですか1
突然のプロポーズ
「ぷ、プロポーズぅッッっ、ごほっ、こほっ」
親友の塚原未玖が大声で叫んだ。驚きのあまり飲んでいたワインが変なところに入ったらしく、ゴホゴホと咽せていた。
揺れる身体と同時に手に持つワイングラスが傾く。中身がこぼれ落ちそうになり、慌てて未玖からワイングラスを取り上げた。
ふぅーー、セーフ。
アイボリーのラグに赤ワインを溢されては堪らない。自分のものならまだしも借り物だ。多少の汚れは仕方がないが赤ワインは勘弁してほしい。
「未玖、お水」
「ご、ごめん」
咽せる未玖の背中を優しく摩りながらお水の入ったグラスを差し出した。未玖は涙目でそれを受け取ると勢いよく喉に流し込む。
そりゃ未玖も驚くよねぇ……
はぁ、とこっそりと溜息をつく。
わたしと未玖は高校時代からの付き合いだ。今年で28歳。つまり付き合いも10年を超える。お互いの恋愛遍歴は殆ど知っている。
「……彼氏には?」
「言えるわけないでしょ、そんなの」
宮内玲、27歳、恋人あり。
先程、彼氏以外の男性からプロポーズされました。