嘘つきは恋人のはじまり。
約二時間にわたる九条社長とのアポイントは、デザートを食べ終えたあと、再度契約内容、条件の確認をして終了した。
わたしの目の前で九条さんが伝票にサラサラ、とサインをしているとテーブルの上に置いた彼の携帯が鳴った。
九条さんは一言断りを入れると部屋を出て行く。パタン、と閉じられたドアを見て脱力するように肩を落とした。
はぁーーーーーー、
それとともに吐き出されたのは安堵の溜息。
早ければあと30分もしないうちに家に帰れる。
携帯を鞄から取り出して確認すれば、未玖とロバートからメッセージが届いていた。
ロバートとは他愛のないやりとりだ。だが、未玖は違う。未玖に謝罪とあと30分ほどで家に着く旨を伝えて、いつでも出られるようにハンガーにかけられたコートに手を伸ばした。
………遠いなあ
時差はほとんどない、と言っても国が違う。言葉も文化も違い、季節も違う。
……あいたいな
さっきまで弾んでいた気持ちは一気にセンチメンタルになった。もちろん仕事は仕事で楽しいしやりがいもある。
初めてあった人に期待を持ってもらえるなんて人生でなかなかないこと。だから、この仕事は引き受けた。それだけだ。
だけど、