嘘つきは恋人のはじまり。



だけど、言いようのない寂しさはどうしたら薄れるのだろう。もっと忙しくすれば紛らわせるのだろうか。


彼と離れて3ヶ月が過ぎた。初めは引っ越しや仕事にバタバタとして寂しさを感じる暇もないほど忙しかったけど、今は気を抜けば切なくなってしまうこの心をなんとかしたい。


……強くならなくちゃ


自分で決めたことだ。後悔はしていない。家族にも会えるうちになるべくたくさん会っておきたいし、未玖にも会えた。


彼とはG.Wには会えるからあと少し頑張ればいい。


『……やっぱり景色が一番だった?』


窓際で東京の街をぼんやりと見ていたせいか、九条さんが部屋に入ってきていたことに気付かなかった。


いつの間に部屋がこれほど暗くなったのだろう。もともと、夜景が映えるよう調整された部屋だった。少しだけ暗くて、橙色味の強い灯りがこの部屋のインテリアや空間を色付けてくれていた。


だけど今はそれが少し落ち着いて外から入ってくる東京タワーの光が眩しくて。振り返ったところで視界が霞んで九条さんの顔がよく見えなかった。

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