嘘つきは恋人のはじまり。
『答えは“はい”か“イエス”しか聞かない』
九条さんは追い討ちをかけるように言葉を続けた。だけどわたしはそれどころではない。理解が追い付かないのだ。
さっきまで仕事の話をしていた。会社への思いや中長期計画の話を聞いて、役に立てるならと彼と仕事をすることに快諾したばかりだ。
それが。
『…すみません。意味がわかりません』
何があってそうなった?
わたしは声を大にして言いたい。
まだ片膝をついたままの九条さんは、わたしの手を握りしめたままゆっくり立ち上がった。
『言葉の通りだが?』
言葉の通りって……?
疑問を持ちながらも、本人の顔を見れば揶揄っているわけでもなさそう。むしろちょっと揶揄ってみた、の方が良かった。その揶揄い方はタチが悪いけど。
ーーー?!
『Will you marry me?』
(結婚してくれませんか?)
九条さんは何を思ったのか静かにわたしを抱きしめると耳元でもう一度同じ言葉を口にした。