嘘つきは恋人のはじまり。
そう言い切ったわたしに未玖は「ええーー」と唇を尖らせた。何がええーなのか、こっちがええーーだ。
未玖はずっとニマニマしている。そして鞄から一冊の雑誌を取り出すとペラペラとページを捲った。
「玲、これちょっと見て」
開かれたページは経営者との対談ページ。今伸び盛りの会社の代表が4人集まりビジネス論を交わしている。
「九条社長ってこの人でしょ?」
「……え、あ、うん」
未玖に今日誰と会ってたかの話をしたとき、すごく驚いていた。目をまん丸にして口を半分だけ開けて“嘘でしょ?”みたいな顔して。でも、名刺を見せれば納得してくれて。今はむしろなぜかノリノリで九条さんことを話してくれる。
「この人凄いんだからね!何が凄いって、会社七年目で120億だからね!もちろん彼だけが凄いんじゃないけど!」
「分かってるって」
「それにすごくモテるの!男女問わず」
そりゃあね。
あの見てくれだしねぇ。
未玖が九条さんの何が凄いかを力説しているけどそれをなんとなく聞き流しながら開かれた雑誌の取材文を目で追った。
今後のビジョンだったり、過去を振り返ってみたり、今世間を騒がせている話題について、だったり。その中で目に留まったプライベートの話。九条さん以外の3人のうち2人は結婚して子どももいる。もう1人は離婚歴有りだがパートナーはいるようだ。九条さんだけがこの中で独身でパートナーがいない。だけど彼はインタビュアーに対してこう答えていた。