嘘つきは恋人のはじまり。



ーーーーこの話をすると驚かれるんですけど、もうずっと片想いで。いつ実るかもまだ分からないんです。



この雑誌は今年の1月に発売されたものだ。つまり、取材はそれより前のこと。


「この相手が玲ってことじゃないの?」


“俺でいっぱいになればいい”


九条さんは何故か悔しそうに言った。彼の言葉の意味を考えればずっと前に会ってて、それから彼はその人に想いを寄せている。


いつ実るかもわからない相手って……。


「はぁーーー」


いや、ないない。
第一絶対知らないもん。会ってない。

「溜息吐くと幸せ逃げるわよ」

「この状況から逃げたい」

「まあまあ。いいじゃないの。九条さん、わたしはいいと思うけどねぇ」


未玖はイヒヒと悪い顔をして新しいワインを開けた。今度はわたしの好きな白。それをグラスに注いでカチンとぶつけてひとりで飲み始める。


「いいと思うけどって」


「下手なことはしないでしょ。これだけ人背負って露出もしてるんだし。何より女はやっぱり愛された方が幸せになるのよ」


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