嘘つきは恋人のはじまり。



うんうん、とひとり頷いている未玖には悪いけどそれには賛同できない。例え良い人だとしても、わたしが将来を添い遂げたいと思えるかどうかは別だし、何より彼氏がいるし。


「わたしは好きな人と結婚したいのっ」


「なら、九条さんのこと好きになればいいじゃない?」


「なんでそうなるのっ」


「え?そういうことでしょ?」


「わたしはロバートが好きなの」


「はいはい。わかったから」


絶対分かってない。


わたしは未玖をじぃ、と睨む。
未玖はへらっと笑うとわたしのグラスにお酒を注いだ。


わかってる。
未玖が言いたいことはきっとこう。


九条さんは日本人だ。日本国籍で実家も日本。何かあってもすぐに帰れる。子どもが生まれてもすぐに助けてもらえる。将来の経済的不安は全くなしとは言えなくても平均より上の生活はできるだろう、と読めるし何より親が安心する。


< 30 / 145 >

この作品をシェア

pagetop