嘘つきは恋人のはじまり。
山崎さんに誘われて期間限定で日本に戻ってきた。そして戻ってきた時からわたしの中で将来についてすごく考えるようになった。
久しぶりに両親に会った感想は“年とったね”だった。弟と妹の話からも両親にはとても心配をかけたことがうかがえた。だけど彼らは面と向かって言葉にして否定することは言わない。
“玲が幸せで笑っているならそれでいい”
2人はそう言って背中を押してくれたのだ。わたしにとって両親はとても大切な人。これからもそれは変わらないけど、彼らの人生とわたしの人生は違うものだ。ずっと傍にいたい、とは思わない。ただ、何かあった時近くにいられたら、とは思う。
「玲、薔薇の花、何本あった?」
不意に未玖が訊ねた。薔薇は先ほど花瓶に替わる瓶に入れて玄関に持っていったのだ。
「さあ?知らない」
「え、ちょっと。数えてきて」
「え、なんで?!」
「いーから数えてきて」
未玖に背中を押され渋々玄関に向かう。まだ蕾も混じるそれをひとつずつ数えて未玖に報告した。
「11本でした」
「うむ。よろしい」
「なにそれ」
くはっ、と笑う未玖につられて笑う。だけどその笑みはみるみるうちに真剣になり、ちょっと、いや、かなり怖い。