嘘つきは恋人のはじまり。
彼と過ごした時間は決して長いとはいえなかった。期間にして二週間ほど。それでも出逢ってから毎日会っていたせいか、出発の前日までわたしは別れを切り出せないでいた。
だからいざ別れを口に出してみれば、凄く切なくて苦しくて、どうしようもなく心が痛かった。
それは彼も同じ気持ちだったようで。
『ここに居てほしい』
切羽詰まった顔で、ロバートは引き止めるようにわたしの手を握りしめた。そしてポケットに手を突っ込んでガサゴソと何かを取り出したと思ったら。
『……旅人の君に家を作ってあげる。そしたらもう、ここの住人だよね?』
ロバートの友人はそのエピソードに“誘拐”だの“窃盗犯”だのいろいろな言葉で彼を揶揄った。それを彼は否定しながら怒っていたけど、その時は気が動転して引き止める方法がこれしか出てこなかったらしい。
わたしはパースから次の目的地に行くことを止めて、その場に留まることにした。もちろんロバートの家、といっても彼も一人暮らしで一緒に住むことになった。それが今から1年半ほど前の話。
だが、今は日本に一時帰国中で赤道を挟んだ約8000kmの遠距離恋愛なのだ。