嘘つきは恋人のはじまり。


顔から火を吹くとはこのことなんだろう。
顔が熱い。いや、顔だけでなく身体全体発火した。


「〜〜〜〜っ!」


ニヤニヤと笑う顔を睨みつける。逃げるようにその場をあとにしようとするも九条さんの手がまたパシンとわたしの手を掴んだ。この場を離れることを許してくれない彼に若干イラッとする。


「宮内さん」

「離してください!」

思った以上に大きな声が出た。昼時で店内は騒ついているものの、周囲の音が一瞬止むぐらい声が大きく、語気が強かった。周囲の視線が一斉に集まり居た堪れない。サーーっと背中から冷や汗が流れた。


これじゃまるで痴話喧嘩。
差し詰め聞き分けのない彼女(わたし)が彼(九条さん)に怒っている、と勘違いされる図。


「……すいません」


「いや、俺も悪かった」



九条さんはわたしの手を離すと首の後ろに手をやり気まずそうに目を逸らした。わたしたち2人の空気がさらにどんよりと悪くなる。


ど、どうしよう。


「えっと、それで。2人に会ってもらいたいって件だけど」


「あ、はい。それは大丈夫です」


「うん。いつがいいかな?できれば4月からもうきてもらいたいと思ってて」


4月?ってあと2週間ないじゃない!
山崎さんに一応相談した方がいいよね。それに、止められることはないと思うけど一応報告しておくべきだと思うし。うん。


「あの、スケジュール確認して連絡します。この後約束があって、すみません」


昼食をとりながらそれとなく山崎さんに報告しよう。九条さんはシュクレがメインでとは言ってたけどできることはちゃんとやりたい。


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