嘘つきは恋人のはじまり。
未玖の言ってることはよくわかる。マネジメントの裁量のほとんどを木下さんが持っているのだ。
九条さんは確認するだけ。ただ、逆を言えば九条さんの考えを実行するのが木下さんの仕事。
「ともかく、なんか凄い人たちだったな」
「いいじゃないの。それだけ玲のプラスになるんだから」
ね、と言われて頷き返す。あの日から九条さんは変なことを言ってこない。今日会った時も社内の案内をしてもらって契約書を交わしたあとは木下さんに丸投げしていた。
帰る時一応挨拶したけど、電話中で。「4月からよろしくね」ってそれだけ一言言われてアッサリ帰ってきた。
ちょっと身構えていた分拍子抜け。
いや、身構えている自分に気づいた時は自意識過剰だと少し恥ずかしくなった。
「あら、玲。電話鳴ってるよー。ロブくんから」
冷蔵庫に飲み物を取りに向かったタイミングで電話が鳴った。「誰?」って聞くまでもなく未玖が答えてくれる。
「