嘘つきは恋人のはじまり。
「ハイ!」
ロバートにも九条さんの会社で働くことは伝えた。何を言われるか少し緊張したけど、電話越しでも分かりやすいぐらい喜んでくれた。
「レイ?ご機嫌だね」
そういうロバートの声も楽しそうだった。少し酔っ払っているのだろうか。
「そうね。楽しいわ」
ロバートはちょうど休憩らしい。常連客同士が結婚することになったらしくみんなでお祝いしているんだとか。
「どうだった?今日会ってきたんだろう?」
ロバートに今日九条さんのオフィスに行くことを伝えていた。もう一度きちんと条件を確認して少しでも違和感があればやめなさい、と言われた。
わたしを買ってくれたことは喜んでくれた彼だけど、やはり何か話がうまいと思っていたところもあるのだろう。それで心配してくれていたらしい。
「うん。楽しそうな人たちだった。キレる人というか、胸を借りるつもりで仕事をしようと思う」
期待されたところはもちろん。期待以上に応えたい。それが自分の成長にもなるし、キャリアになる。シュクレでも役に立てればいいな。
「大丈夫。レイならきっと」
ロバートの言葉に「ありがとう」と返す。少しだけ話して彼は仕事に戻った。電話を切ったあと少し寂しさが湧く。それを払拭するように冷蔵庫から冷えたビールを取り出すといそいそと未玖の元に向かった。