嘘つきは恋人のはじまり。
五年前の出来事
後悔と懺悔と真相
ーーザクッ、ザクッ
静かな公園に響く音はわたしの足音だけだった。公園、といっても間隔的に外灯とベンチがあるだけで、道と道をショートカットするためのもの。滑り台やブランコといった遊具はない。
あと1週間ほどで4月を迎える今日、わたしはひとりで公園に来ていた。3月といってもまだまだ寒く、厚手のコートにマフラーを巻いても夜はさらに冷える。
薄らと光る外灯はベンチを程よく照らしてはいるものの、わたしが腰を下ろしたここのベンチだけは何故か光が当たらなかった。
「もう五年になるのね」
ひとりごちながら手に持ったビニール袋から缶コーヒーをひとつ取り出す。それをベンチの片隅に置くともうひとつを取り出してカイロがわりに頬にあてた。
……あったかい。
冷たい空気が鼻の奥を突き刺して思わず涙が出そうになる。その涙を冷たい空気のせいにしてわたさは静かに流した。
ごめんなさい。
去年これなくてごめんね。
でも、来年からもっと来れなくなるの。