嘘つきは恋人のはじまり。
5年前の今日、
わたしはここで一人の男性に出逢った。
その男性は辛そうに呻き声を上げてこのベンチに横たわっていた。時間帯も夕方を過ぎて夜に差し替えるちょうど今の時間帯と同じぐらいだった。
このあたりは郊外に位置する住宅街。少し日が長くなったと言えどもまだまだ夜は長く、今ももう辺りは暗くなっている。外灯の光がうまく当たらないせいか人が通らなかったのか、彼がどれだけここにいたのかは分からないけどわたしが声をかけた時は酷い顔色だった。
声をかけた。「大丈夫ですか?」と。
掠れた声で返ってきた声はうまく聞き取れなかった。救急車を呼ぼうとするとその人に止められた。
『…すぐ、…おさまる、から』
近くにコンビニがあったことを思い出してわたしはコンビニに向かった。お水を買って残っても後で自分で食べればいい、と思いながらゼリーやスープなど適当に籠に入れて公園に戻った。
その男性はまだそのベンチに居た。わたしに気づくと『帰れ』と言った。わたしはその言葉を無視してビニール袋からお水を取り出すとキャップを開けてそれを彼に渡した。