嘘つきは恋人のはじまり。
『起き上がれますか?飲めるなら飲んでください』
暗がりで細かいことは分からないけどさっきより幾分落ち着いたように見えた。それは彼の息遣いがさっきより落ち着いていたのと、呻き声がなかったからだ。
男性は静かにゆっくりと身体を起こすとペットボトルを受け取り水を飲み始めた。寒い場所で水は冷えると思いコンビニで温めたスープを取り出す。
『冷えるのでよかったらスープを』
そう言ったところで男性はいきなり怒り始めた。
“そういうのは頼んでない。大きなお世話だ”と。
それで少しだけ口論になって興奮したことが良くなかったのか、男性は小さく呻くと俯いて身体を震わせた。
ゴホッ、
砂利の上に落ちた吐出物。それは暗い夜に赤黒く染まった。独特の鉄の香りにその場で凍りつくわたしとぐったりとベンチに倒れる男性。
わたしは119を押して電話口の相手に説明した。支離滅裂で何を言ってるか自分でもわからなかったけど、電話を切ってしばらくすると救急車の音が近づいた時は本当に安心した。
救急車がくるまで、わたしは男性の意識が途切れないようにすることに必死で、色々と話しかけていた。数人の救急隊員の人がタンカーを持って来た時説明する時間ももったいなくて一緒に救急車に乗り込んだ。