嘘つきは恋人のはじまり。
明るい車内で改めて男性の顔をみると生きているとは思えないほど青白い顔をしていた。だけど玉のような汗もかいていた。
周囲からはよく分からない医療用語が飛び交う中、わたしは救急隊員の質問に答えながらその男性と病院に向かった。
翌日、わたしは大学の卒業式だった。
わたしは男性を病院まで見送ると気にはなりながらもこれ以上他人が出来ることはないと思い、一度自宅に戻って荷物を取ると実家である神戸に向かった。
就職先で入社式より早くインターン生として先に上京していたため実家に戻るのはかれこれ二ヶ月ぶりだった。
本来ならうきうきするところ、帰りの新幹線でもずっとその男性のことを考えて、翌日の卒業式もあまり楽しめなかった。
それならば、と思いあの病院に電話して確認しようと追いコンで盛り上がる最中、こっそりとトイレで電話した。
だけど、その男性は昨夜亡くなってしまった、と聞かされた。電話口の看護師らしい女性が『もう少し早く病院にこれれば』という何気ない言葉が胸を突き刺した。
わたしがもし、あの時。
止められても気にせず救急車を呼んでいたら、彼は助かったのに。