嘘つきは恋人のはじまり。
わたしはロバートのことが大好きだ。
だから、もちろんお断りした。相手にもそう伝えた。それなのに。
「……納得してくれなくて」
「えぇーー。いったい、何したの?」
「知らないよ、そんなこと」
付き合っている恋人がいることも伝えた。それなのに男は納得してくれなかった。途方にくれながら帰宅すれば、未玖がマンションのエントランスで待ち構えていたのだ。そして、未玖に急かされるまま先ほどの出来事を話した。結果、未玖は驚きのあまり、ワインを喉にひっかけたのだ。
「でも、今日仕事だったんでしょ?」
「そうよ」
「それなのになぜ?」
そんなことわたしが聞きたいよ。
アポがあって仕事の話だと思ったら違ったんだもの。いや、違ったわけでもないんだけど、えっと、どう説明すればいいんだろう……。
「……簡単に話すね」
「事細かに話してくれてもいいわよ」
夜は長いんだから、とウインクする勢いの親友の顔は先程とは打って変わってとても楽しそうだった。もうこれは何か期待を込めている顔だと玲は半分諦めた。
「細かいも何も、それほど接点がないんだけど」