嘘つきは恋人のはじまり。


5年って長いようであっという間だ。彼はいったいいくつだったのか知らないけど、きっと今のわたしよりもう少し上だったんだろうな、と思う。


ーーザクッザク、

俯いて両手に握りしめたコーヒー缶を見つめたまま、意識を他所にやっていたせいか、近く足音に気がついたのは、視界に誰かの靴の爪先が入ってからで。


「…やっぱり、宮内さんだ」


思わず顔をあげるとどこか安堵したように表情を崩す九条さんにわたしは呆然と見つめた。


泣きすぎてうまく頭が回らない中でどうして九条さんがという疑問でいっぱいになる。言葉にしていないのに、九条さんはわたしの言いたいことに気がついたのか質問に答えてくれた。


「偶々、近くに用があってね。それより…泣くほど何かあった?」


九条さんはベンチに腰を下ろすわたしの顔を覗き込んで眉を顰めた。近づいてくる顔をぼう、と見つめながら小さく首を横に振る。


「…いったいいつからここに?缶冷えてるし。……ってか、こっちのコーヒーは誰の?誰か一緒だった?」


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