嘘つきは恋人のはじまり。
今日のこの時間はわたしにとってすごく大切な時間だ。なぜなら彼の命日にここに来るのはきっとわたしの人生で最後になるからだ。
それを邪魔されたこと、矢継ぎ早に質問されたこと、いろんなことが壊された気がして思わず声を荒げてしまった。
「…九条さんには関係ないです!放っておいてください!」
九条さんは一瞬目を丸くするもすぐにその表情は真剣になる。
「放っておけない。こんな寒空の下であなたひとり、しかも泣いている人を放っておけるわけない」
「いいんです!わたしが良いって言ってるんだから」
「なら俺もいいだろう?放っておけないんだから」
わたしは諦めた。
余分なエネルギーを使う気力がなかった、とも言う。これ以上九条さんに付き合っても結局なんだかんだ言われて彼に丸め込まれるのだろう。
考えることを放棄してもなぜかそのことはわかった。たった数回しか会っていないのにわたしは知らず知らずのうちに彼のひととなりを分かってきたのかもしれない。
……そういえば今何時だろう。
いつの間にこんなに暗くなって。
「昔、とはいっても今から5年ほど前かな。ここで人が倒れていた」