嘘つきは恋人のはじまり。
「起きたか?」
ドアが開き顔を覗かせたのは九条さんだった。ホッと胸を撫で下ろしているとフワーンといい香りが鼻をくすぐる。
「近くの居酒屋でテイクアウトしてもらった。腹減ってるだろう?」
九条さんはビニール袋をテーブルに置くとマフラーを外し、コートを脱いだ。それを持ってリビングから続くドアを開けて奥に消えていく。
その様子をじっと見ていたら九条さんがこちらに戻ってきたまま、何故か困ったように笑うのだった。
「なんか犬みたいになってるけど。どうした?」
九条さんに言われて今の状況を考える。たしかに今、わたしは九条さん家のソファーに横たえた身体を起こしたままフリーズしていた。目だけで九条さんを追っていれば、まるで主人を追う犬のようだろう。
「寒くない?随分冷えてたから」
九条さんはわたしの答えを聞くこともなく、特に気にする素振りもなくテーブルに置いた袋から中身を取り出していく。
唐揚げ、焼き鳥、サラダ、だし巻き卵…その他居酒屋メニュー盛り沢山。一気に室内が美味しそうな香りが広がり、お腹が「くぅー」と鳴った。
やばい。飯テロだ。
飯テロ。お腹が鳴る。