嘘つきは恋人のはじまり。
有期(仮)恋人契約
心地よい温度だった。
ふわふわして、だけどいつもより安心感がある。
とても大切にされている気がして、大事に包みこまれている気がして、なんだかくすぐったい。だけど、それが嫌じゃなくて、むしろもっとこう……
「……え」
重い瞼をあげて驚いた。
それはそれはもう、心臓が止まりそうなほどだ。驚きすぎて声がでない。人間って本当にびっくりすると固まるもんだ、とはじめて知った。
視界いっぱいに広がる景色はしっかりと姿を現した鎖骨。そして、男の呼吸と共に上下している綺麗な喉仏。
………うそっ?!え、なんで……っ?!
思わず視線を下にやる。衣服を確認するも、昨日のまま。なにも脱がされたりしていることもない。
だが。
「……ん、」
あろうことか、男はわたしを抱き寄せると頭から抱え込んでしまった。先ほどまでは包み込まれているような感じだったが、これはもう抱き枕状態である。
おまけに唇がおでこより少し上で触れるか触れないかの距離で止まっている。すぅ、すぅ、と吐息が触れ、生温かいリアルな温度に心臓が跳ね上がった。