嘘つきは恋人のはじまり。
忘れていたわけではない。
でも、正直リアルさはなかった。どうして九条さんが出逢って間もないわたしにプロポーズしたのか全く理解できなかったし、未玖のいうヲ“片想いの相手=わたし”というのも未玖の妄想で現実味がなく。
「……まさか、それも忘れたとか」
「お、覚えてます!覚えて」
「今の今まで忘れてたくせによく言う」
図星を突かれて返す言葉もなかった。どんな理由があろうと警戒が緩んでいたのは事実。それでも九条さんにそんなセクシャルでセンシティブな話をしてしまったことに対する罪悪感と恥ずかしさがこみ上がり、どうすればいいのかわからなかった。
……このことは誰にも言ってないのに。
セックスが嫌い
そこまで思ってはない。ただ、それほど積極的になれるものでもない、のが本音だ。
好きな人と触れ合う時間は心地よい。
触れたい、キスしたい、抱きしめてほしい、
それは思う。
だけどそれだけだ。
異物が体内に入るあの感覚はどうも心地良くない。
あの時間が苦手で、それならただ、ジャレあっているだけでいいと思ったりする。でもそれはこちら側の意見で、彼のことを考えるとそれだけでは終われない。