嘘つきは恋人のはじまり。
九条さんはざっくりと経緯を説明してくれた。それは、助けてくれた“ミヤウチレイナ”を探すためにあの手この手を使った話だ。
ーーーミヤウチレイナ、という女性を探している。
九条さんがそう言えば嘘か真かたくさんの自称“ミヤウチレイナ”が集まった。中には嫌がらせをしてくる人までいて、そのせいで何度も引越さざるを得ない状況までに。
会社の外で待ち伏せ、ファンレター?ならぬラブレターを渡したり、どこで入手したのか携帯への着信やメールが相次いだ。それはそれはもう、九条さんだけでなく周囲の人まで巻き込んだらしい。
「玲が嘘をつかなければこんなことにならなさった。偽名もそうだし、連絡先も。そしたら玲が“お詫びをしたい”って言うから、先日のプロポーズを受けてくれって言った」
九条さんの要求にわたしはノーと言った。
「彼が好きだから」というわたしに「俺を好きになればいい」と九条さんが言ったそう。だけどわたしは。
「『ならない。だって九条さんのこと全然知らないから』って。だったら知っていけば良い、という話で纏まった」
「どうして恋人なんですか?」
「アイツと同じ土俵に立てない俺の何が分かんの?」