嘘つきは恋人のはじまり。



そう言われればぐうの音もでない。ここで『恋人にならなくても九条さんのことを理解できる』なんて言っても信用されないし、無理な話だろう。


……


わたしは何度か深呼吸しながらもう一度契約書の内容を目で追いかけた。するととんでもない文言を見て、また愕然とする。


【交際期間】

・乙が日本にいる間、また、出国するまでとする。



【約束事】

・期間の最終月には再度甲が乙にプロポーズし、これに対して乙は誠実に判断した結果を述べること。

・現在の恋人との連絡に制限はしない。その代わり甲との連絡にも制限はしないこと。

・休日はなるべく時間を合わせ、共に過ごすこと

・パートナー同伴が必要な会合や会食及びパーティーへの参加の場合、乙がパートナーとなり、参加すること。

・互いを知るための協力は惜しまないこと。また、………


ひぃいいいいいいいいいいやああああああ!!!!!!!


いくつも連なる“ 約束事 ”について目を通しながら心の中で叫んでいた。


だけど九条さんの目や空気は拒絶を許さず、わたしは彼の醸し出す雰囲気と自分のしでかした事態の大きさにショックで何も言えなかった。



……完全にアルコールのテンションだ、これは。酔って覚えてないもの、こんなの。


うぅ、ひどい。最悪。


がっくりと項垂れていると、約束の最後の一文が目に入った。それを見た瞬間、もう無理だった。


・双方同意の上、セックスは可とする。


「す、するわけないでしょーーーーーーっっっっ!!!」



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