嘘つきは恋人のはじまり。
ベッドの縁に座っていたわたしは思わず立ち上がると隣に腰を降ろしている九条さんを睨みつけた。
「こんなの、無効ですっ!覚えてないのに卑怯です!!!」
「けど、ちゃんと玲の判子がある。なんならボイスレコーダーで記録もしてるが、それも聞くか?」
九条さんはベッドに備え付けのコンセントから伸びている充電器に挿しっぱなしの携帯を取ろうと手を伸ばした。まさかそこまでされているとは思わずわたしは焦った。
「それと、それにも書いてるが、万が一反故になる場合、今の恋人やらに話をつけることになっている。それでもいいのか」
え?
九条さんは手にした携帯を持ちながら警告した。その言葉に手に持つ紙を覗き込んで、彼が言った内容がどこにあるのか、を探す。
………嘘だ、、、
目に映る文言は紛れもなく今九条さんが言った内容と等しいものが記載されていた。
「……嘘、」
「言っておくけど、無理矢理じゃないからな。玲が詫びたいって言ってからのその流れだ」
わかってる。わかってる。
けど……!
「ほら、聞いてみろ」
ぽん、とタップされて録音された会話の一部が流れた。わたしは再生されて5秒も我慢できずにそれを切った。