嘘つきは恋人のはじまり。
咄嗟に『大丈夫』だと言ったものの、腕捲りした状態で見下ろした今の状態に苦笑いしかででこない。おまけにいつもとは違う香りを纏っているせいで落ち着かないのだ。
「……ふぁ、……とりあえず、寝るか」
部屋に一瞬訪れた静寂。それをぶった切ったのは九条さんの気の抜けたあくび。
だけどそれもその筈。今は真夜中。いくら目が覚めたと言えど眠いものは眠い。
「あ、なら、わたしはソファーで」
これ幸いとリビングに残ることを告げたのに、九条さんの顔が一気に歪んだ。
「何馬鹿なこと言ってんだ。一緒に寝るんだよ」
「い、一緒にはっ」
「さっきまで一緒に寝てただろう?言っておくけど、くっついてきたのは玲だからな?」
腕を掴まれなんとか反抗しているのにまさかのオチに力が抜けた。その瞬間、ふわっと身体が浮き上がる。
「ぅわっ!!ちょっと!自分で!」
「さっきもこうやって運んだんだよ。覚えてないみたいだから再現したんだ。ちゃんと捕まれよ」
九条さんは半ば呆れながらもわたしを寝室を運ぶとベッドに優しく静かにおいた。すると先ほどのようにわたしの隣に身体を横たえて両手を伸ばしす。
「ん」
「……もうくっつきません」
「はぁ?」
「はぁ?じゃないです。それはこっちの、…ってぇ!」