嘘つきは恋人のはじまり。
「会社でも会わないの?」
「……見かけないねぇ」
初日だけ会った。それに、改めて(一応)挨拶もしたし、今後の会社の方針だったり、予算会議だったり、そういう経営陣主催の会議には出席していた。ただ、そういうのはその日1日でまとめられており、ひとつの会議は長くて30分。メンバーが入れ替わりながらも九条さんは昼前から夕方ぐらいまでずっと会議室に篭りっぱなしだった。
かくいうわたしも、木下さんと行動を共にしつつ、その半分ぐらい同じ会議に出たんだけど。
とりあえず、あまり会社にいるようではないらしく、居たら居たで色んな人に捕まって大変そうだ。
だけどそれとは別で連絡はくる。プライベートの用事で。もちろん、食事をしよう、というものだ。しかし、九条さんの都合の良い時間はわたしの都合が悪い。休日返上で働いている今、わたしと彼の時間は全然合わないのだ。
「まぁ、うちも会社で社長はあまり見かけないけど」
「そうだよね。居たら居たでなにかと忙しそうだし」