嘘つきは恋人のはじまり。
「いただきます」
それから1時間もしないうちに料理は出来上がった。メインディッシュとスープの他、山芋とオクラの梅和え、保存食の金平ごぼう、塩昆布キャベツも出した。
九条さんは丁寧に手を合わせるとまずスープを啜った。鮭の旨味、鶏団子の生姜、大根おろしの甘みがきいて美味しい。お野菜もたくさんで身体が温まるスープだ。
甘酢と白米は相性抜群。玉ねぎやパプリカも一緒に炒めたからビタミンは盛り沢山。
「これ、旨いな」
そして九条さんが気に入ったのはなぜか塩昆布キャベツ。千切りにしたキャベツに塩昆布とごま油で和えたもの。お酒のツマミにもなる。酒飲みの彼にはヒットしたんだろう。今日は車なのでお酒はないけど。
九条さんはあまり喋ることなく、ただひたすらパクパク食べていた。おかわりもありますよ、と声をかけるとスープもご飯も豚肉も追加された。
聞けばこの数週間、まともに食事をしていないらしい。接待や会食は食べた気がしないうえ、やはりあまり食べられないんだそう。
「……美味かった。ごちそうさま」
テーブルの上に並べられた食事は綺麗に無くなった。塩昆布キャベツは2回も補充した。先日作った分がほとんど九条さんの胃袋へ。彼は意外と大食いなんだと知った。