嘘つきは恋人のはじまり。
今回旅の拠点となる宿泊施設は京都観光にうってつけの立地、かつロバートの希望である温泉と和室を兼ね揃えた小さな旅館だった。
「ようこそ、お待ちしておりました」
和服を着たスタッフが和かに出迎えてくれる。ロバートは「オセワニィナリマス」と覚えたての日本語で挨拶をし、わたしもそれに倣って頭をさげた。
「こちらがお部屋でございます」
部屋付き露天風呂と広めの和室。寝室は和室に合わせた大きなベッドがででん、と存在感を放って
いた。
少しだけ贅沢した。ちょっとリッチな部屋だ。だけど彼と2人で選んだ場所。私たちは部屋を見渡しながら顔を見合わせて笑った。
「さすが日本のホテル。毎日誰かが泊まっているとは思えないね。ホコリひとつない」
しっかりと糊付けされた寝具類、備付けのティーポットやグラスももちろん綺麗だ。トイレやバスルームのアメニティーが充実しており、ロバートにとってとても新鮮に映ったんだろう。パシャパシャと写真を撮っている。