嘘つきは恋人のはじまり。
「……ベッドに行こうか」
耳元で擽る甘い声。彼の目を見つめれば熱い眼差しで見つめ返された。
「……うん」
返事をしながら頷く。だけど内心はモヤッとした気持ちがふんわりと浮かびあがった。
嬉しい、のだ。
だけど「これから始まるんだ」と思うと少しだけ憂鬱になる。
とは言っても初めから最後まで嫌なわけじゃない。1番盛り上がるところで盛り上がれないのがなんだか申し訳ないのと、共感できないせいか憂鬱なのだ。
そんな気持ちを押し殺しながらロバートに手を引かれて浴室から寝室に向かう。キスをしながら、立ち止まりながら、抱き合いながら。
時々転けそうになって、顔を見合わせて笑って。
危ないよ。
でもキスしたいんだ。
そんな会話をしながらキスを強請る彼に応えようとするまま、二人揃ってベッドに転がった。
あれだけ楽しみにしていた浴衣は、脱衣所に置いてきたままだ。少し湯冷めした身体は湿ってはいるものの、それほど濡れてはいない。
「レイ」
ロバートがわたしを呼ぶ。甘く優しい声がわたしを求めた。キスをして見つめあってその度に抱きしめあって、キスを繰り返す。
何度も。
そう、何度も。
お互いの体温を思い出すように。忘れないようにわたしたちは互いの身体を抱きしめて、寂しさを埋めるように身体を重ねた。