恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
therapy6
羽瀬秋人side
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「だから見合いなんてしないって言ってるだろ!」
突然病院の院長室で院長である父親に呼び出されたが、実際に話があったのは久しぶりに院長室に姿を見せた母親の方だった。
声を荒げる秋人をたしなめるように母親の千草が見合い写真を差し出したが、秋人はそれを一瞥しただけで手には取らなかった。
「だってあなた、早く結婚相手の顔を見せてちょうだいっていってもう二年よ?聞けば誰とも結婚する気が無いだなんて。じゃあもうこうするしかないじゃない」
大病院である羽瀬大学病院の院長の一人息子として生まれた以上、結婚して俺の次の跡継ぎを確保しておかなければならないというのが母の言い分らしい。
…そして俺に残された手段がお見合いか。
大体今時見合いなんて。目の前にいる両親だって恋愛結婚の筈だ。
「あの、俺まだ27なんだけど」
「あら、もう十分結婚適齢期だわ。お父さんが私と結婚した時なんてもっと若かったわよ。
大体あなたはいくつになってもちゃらんぽらんで、羽瀬大学病院の跡取りとしての自覚が無いのよ」
どうやら俺に早く身を固めさせて落ち着きたいらしい。