恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
場所は、父さんがセッティングした都内のラウンジだった。何度か会食で利用した事があり、すっかり気に入っているらしい。
シックなホテルの正面玄関から、上昇するにつれて照明が明るくなっていくエレベーターに乗り21階へ登る。
俺よりも遙かに気合いをいれた様子の両親に挟まれ、ため息をつきそうになりながらたどり着くと、どうやら先方は先に到着していたらしく母さんはある席に向かい足をはやめた。
「相澤さん、先にいらしていたのね」
そう母さんが声をかけた先に視線を向ける。
「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」
そう言って立ち上がり母さんの言葉に会釈を返した母親の友人らしき人の隣にいる女を見て、何故か一瞬だけ、自分が固まったのが分かった。
白い肌。肩の下で柔らかに広がる栗色の髪。茶がかかった瞳。その華奢な体が立ち上がり、俺達に向かって頭を下げる。
「初めまして、相澤沙和です。よろしくお願いします」
どこか緊張を感じさせる細い声が耳をくすぐる。
その瞳が俺を遠慮がちに捉え、気がつけば自分から目を反らしていた。
(……可愛い)
思わず漏れたそんな心の声を瞬時に打ち消す。