恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
変な女だと、そう鼻白んだのは束の間だった。
席につき、親同士が話に花を咲かせ当事者である俺と彼女が大人しくしている中で、彼女は対人恐怖症でも挙動不審な人間だという訳ではなく、ただ男性を怖がっているのではないかと疑い始めた。
料理が運ばれ、その食事中も俺の母親に対しては時折自然な笑顔を見せるが、父さんにみせる表情はどこかぎこちない。それは俺も然りであり、一応見合い相手である筈の俺の目をあまり見ない。
それに、手に触れた時のあの怯えるような目。
脳外科医である俺の担当ではないが、彼女と似た反応をする精神科の患者を見たことがあるような気がする。
──まさか男性恐怖症か?
…いや、それならそもそも見合いなんて。
そんな事をずっと考えながら料理を口に運んでいた。
「…じゃあ、私達はそろそろ席を外します?ほら、私達がいると二人も話しづらいでしょうし」
内心で彼女への憶測を立てて黙っている俺に気を揉んだのか、母親が急にそう言って席を立った事に気がついてハッとする。
(…おい待て)