恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】


「君さ、男が怖いの?それとも俺だけ?」

お前さ、と言いかけたのを直前で留めた。仕事と関係の無い事となると口調が思わず荒くなってしまいそうになる。

彼女が俺の質問に伏せていた目を見張り、少しだけフリーズしたように固まった後、申し訳無さそうに答えた。

「い、嫌な思いをさせてごめんなさい。羽瀬さんがって訳じゃなくって…その、男性の方が、少し苦手で」

(少し、ね)

本人は隠し通すつもりなのだろうし、このまま触れないでおいてやるべきだと分かってはいた。

だが、それならどうしてのこのこ見合いにやって来たのか、精神科にかかって診察は受けているのか、聞きたい事が喉元までせり上がる。

「…へぇ、じゃあ精神科にかかってみたら?」

少しだけ言葉に迷った挙げ句の自分のそんな返しにほぞを噛んだ。他意は無く率直な意見だったが、初対面の女にいきなり精神科に行った方が良い発言はデリカシーに欠けていただろう。

傷つけてしまったかと彼女の様子を伺うが、意外にもあまり動揺する事はなくぎこちない笑顔を作って返される。

「実は、最近クリニックに通ってて…心的外傷後ストレス障害っていう病気だって診断されました」

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