恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
小さな声でぼそっと囁かれた言葉に、申し訳なく思いながらもはいと返した。
──その時。
ガラガラっと扉が開いて、足音で二人組のお客さんがお店の中に入ってきたとわかった。
「すみません、予約してないんですけど入れます?」
そんなお客の一人の声が店内に響き、女将さんがにこにことしながら頷く。
「カウンター席でもよろしければ大丈夫ですよ」
「ありがとうございます、じゃあカウンター席で。良かったなぁ天津」
(・・・え)
”天津”という言葉に身体がわかりやすくビクッとする。
(いやまさか、そんな)
二つの足音がコツコツと近づく。目を見開いて固まる私を見て羽瀬さんが目を見張る。
「お隣、失礼します」
「・・・・・・っ」
酷く聞き覚えのある声にそうささやかれた時、考えるよりも先に、私は反射的に椅子から立ち上がろうとした。だが、脚の長い椅子のせいでバランスをくずして転げてしまいそうになる所を、羽瀬さんが手を伸ばして支えてくれた。
「悪い」